| 長正館は、笹森順造16代宗家から、昭和47年(1972年)3月に認可を受け、小野派一刀流宗家道場禮楽堂大阪支部道場として活動しています。また吉田誠宏先生、長井長正先生の意志を継ぎ、古伝の一刀流の研究と研鑽も続けています。 |
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一刀流から見た「入身になろうとするところ」 |
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日本剣道形の小太刀の1本目2本目の「入身になろうとするところ」だが、
その解釈がどうも曖昧過ぎるのでは無いかと感じている。
@「入身になろうとするので」ということから形に表さない。
A間合いに入ったら「やや前傾する」。
B間合いに入ったら右足だけ少し出す。
C間合いに入ったら右肩を出す。
D入ろうとする気持ちだけ。
E半身から一重になろうとするところ。
F気勢を充実して、相手の手元に飛び込んでゆく状態。
G4歩目を踏み出そうとした瞬間。
H半身から一重になろうとしたところ。
I入身になろうとした「気」を感じ取る。それが「機」だ。
などなど、色々な解釈や説明を過去に聞いた。
何となくわかるが、具体的な動き、その理合がわからない。明確では無いのだ。
ここでは一刀流の考え方から剣道形の小太刀のうち「入身」について考えてみたい。
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※日本剣道形について
長正館では、従来、自由な立ち位置から一刀流の研究と同様に日本剣道形の研究も行っている。全剣連の形講習会での指導方針と異なる場合もあるが、全日本剣道連盟の「日本剣道形解説書」から逸脱しない限り、 その考え方は自由であるという方針である。長正館の考え方は、形の講習会等では、敢えて述べないように・・・と先代の井上勝由先生からは強く申しつけられていた。これは長井長正先生から伝わる戒めでもある。今回は支障無しと判断し限定的に公開した。あくまで考え方の一つとして見て欲しい。(粕井) |
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全日本剣道連盟「日本剣道形解説書」 |
1)一刀流における「入身になろうとするところ」
長正館では小野派一刀流の稽古を永年続けているが、小太刀においても、小太刀(小太刀対太刀)五本、合小太刀(小太刀同士)六本の組太刀を修練している。このうち、「入身」の部分が顕著なのが、小太刀二本目の「下段之付」で、打方の大太刀に対して、遠間から大きく踏み込んで大太刀を制する機敏で豪胆な技となっている。
大切なのは、間合いで不利な小太刀は、遠間から自分の有利な近い間合に一気に入らないといけない・・という点である。

一刀流小太刀2本目「下段之付」より入身部分
(↑写真クリックでYouTube動画が開きます)
※動画は説明のため、股立ちを取り、実際の稽古よりゆっくり動いています。
この左足の位置が小太刀が優位の間合いであり、ここから一気に大太刀の懐(ふところ)に飛び込める気勢と体勢の合わさった状態になる。この瞬間が「入身になろうとするところ」。実際の小太刀は大太刀の構えをもろともせず進み、飛び込めば打太刀(一刀流では打方)の右小手を打ち込める間合いで打太刀の右拳を攻め、それを守ろうとした打太刀の剣先がやや開いた瞬間に右足を大きく踏み出して大太刀を制するのである。
つまり、小太刀が一気に自分の有利な間合いに飛び込めるかどうかが大切な部分であり、飛び込めも出来ない間合いや体勢で、いくら気勢を出しても無意味なのである。「攻め」とは「打ち込めるか否か」で決まる。打ち込めない状態では攻めにはならない。
2)日本剣道形における「入身になろうとするところ」
長正館での剣道形も、一刀流の考え方は少なからず入っている。
小太刀一本目は打太刀との関係で分かりづらいので小太刀二本目で説明する。
※写真は編集の関係で一刀流の木刀を使用している。

【3歩進んで間合に入ったところ】

【左足を引き付け、入身になろうとしたところ】
実際にやってみたらわかるが、3歩進んで間合に入ったところ(上の写真)では、小太刀は飛び込んでも相手に届かない。
下の写真は3歩進んだその流れで左足を引き付ける。
つまり、足を広げたままでは無く、左足を右足に近づけるのである。左足を引き付けることにより、小太刀は一気に打太刀の懐に飛び込める間合いになる。この「左足の引き付け」で小太刀は太刀と対等になるのだ。
つまり、動作だけを見たら、3歩目の、
「左足の引き付け」こそが「入身になろうとするところ」
なのである。
仕太刀は左足を引き付けながら打太刀を押さえにかかる。押さえられ飛び込まれては太刀は負ける。負けると気づくから太刀は脇に大きく引き取り大太刀優位の間合いになろうとする。
参考動画((剣道形小太刀2本目より)

(↑写真クリックでYouTube動画が開きます)
※動画は説明のため、股立ちを取り、ゆっくり大げさに動いています。
3歩目までは小太刀が不利。だから小太刀の気勢は最も重要になる。
左足の引き付けで小太刀と太刀は対等。左足の引き付けにともなう上から制する動作で、小太刀は太刀より優位となる。なぜ太刀は脇に成らざるを得ないかの理合である。
太刀は大きく引いて太刀優位の間合いになろうとする。小太刀はすかさず自分の間合に入るから、負けじと大太刀は切りかかる。
この動画では太刀が脇構えに引く際の左足はほぼ動きていないが、小太刀の勢いが強い場合、打太刀は脇になると同時に、さらに左足も大きく引き付け、太刀優位の間合いになるように長正館では心がけている。

なおこれは余談だが、古伝の一刀流を研究する中で、小野家文書(おのけもんじょ)の中に「小太刀之次第」という記述があったので紹介しておく。小野忠方(5代)項の小太刀之次第には、撥気之事、仕合心之事として、「弾ム気ヲ専用也、戸障子ニテモ蹴ヤブリ行心也、敵モロトモニ突キタヲシテ行心ナリト可知」と記され、これは入身の際の心構えであろうと推測できる。小太刀を遣う際は、身を捨て、強靭な精神力を持ち、恐れず飛び込む事が大切だと伝えている。これが無ければ小太刀の技は成り立たない。剣道稽古全部にも通じる教えでもある。
文責:粕井誠(長正館館長)
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入り身にならんとするところ
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